治療と予防コラム

ストレスで増加するホルモン「コルチゾール」と糖尿病の関係とは

糖尿病に関係するホルモンにはインスリン(血糖値を下げるホルモン)や、グルカゴン(血糖値を上げるホルモン)がありますが、その他にも「コルチゾール」というホルモンも関係しているのをご存知ですか?「コルチゾール」は一般的にはあまり知られていませんが、糖尿病とどんな関係があるのかについてご紹介していきます。


「コルチゾール」のさまざまな働きと、糖尿病との関係

まず、コルチゾールの働きについて見ておきましょう。
コルチゾールとは、脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモンの刺激によって分泌されるホルモンであり、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の一種です。副腎皮質ホルモンという名前より医薬品でよく使われるステロイドホルモンという名前の方が馴染みがあるかもしれません。これはもともとは人間の体で作られる成分です。


<コルチゾールの働き>

  • 肝臓での炭水化物や糖の代謝
  • 筋肉でのたんぱく質の代謝
  • 脂肪組織での脂質の代謝

など、さまざまな栄養素の代謝に関与しており、人の免疫機能への作用や抗炎症作用などを持つ人間にとって大切なホルモンで、分泌不足でも分泌過剰でも健康に影響を及ぼしてしまいます。


このように、さまざまな作用のあるコルチゾールが糖尿病に関係するのは、主に糖の代謝経路においてです。肝臓での糖の代謝は「糖新生」ともよばれ、筋肉中のたんぱく質をアミノ酸に分解し、肝臓でいったんグリコーゲン(※エネルギーを一時的に保管するためにブドウ糖が変化したもの。筋肉や肝臓に存在する物質)という形に変化させ、それをブドウ糖に合成する反応です。食事から摂取した栄養素は、普段はグリコーゲンという形でエネルギー源として貯蔵されていますが、ブドウ糖(グルコース)が不足するような飢餓状態になったときに糖新生が起こり、筋肉が分解されブドウ糖が作られます。

この「糖新生」を促進するのがコルチゾールで、血液中のブドウ糖(グルコース)を増加させ、血糖値を上昇させます。そのため、コルチゾールの分泌過多の場合は糖尿病のリスクを上げたり、進行を促したりしてしまうのです。



コルチゾールと「インスリン抵抗性」

しかし、コルチゾールの作用はこれだけではありません。コルチゾールには「インスリン抵抗性」があることも医学的によく知られています。

「インスリン抵抗性」とは、インスリンに対する感受性(インスリン受容体と結合しようとする結合親和性)が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態のことをいいます。
コルチゾールは、前述の通り、糖新生を促進する作用があり、それによって上昇した血糖値を膵臓から分泌されるインスリンが下げようと働きますが、これをコルチゾールはインスリン抵抗性によって抑制するため、血糖値がうまく下がらず、糖尿病を誘発したり、症状を悪化させてしまうおそれがあるのです。


コルチゾールとストレスの関係

このように、コルチゾールの過剰分泌は血糖値を上げてしまいますが、ストレスによって増加することが分かっています。
コルチゾールは別名「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
日常生活でストレスを受けると、コルチゾールが分泌され、ストレスをコントロールし、私たちの体を守ってくれます。

しかし、一般的な成人のコルチゾールの1日の分泌量は約20mgに対し、大きなストレスや慢性的なストレスがかかると1日200〜300mgも分泌量が増加するため、コルチゾールの糖新生の促進作用や、インスリン抵抗性が強まり、その結果血糖値を上昇させます。
糖尿病患者さんのように血糖コントロールを行っている人は、ストレスによりコルチゾールが増加してしまうと、血糖コントロールが困難になり、糖尿病を悪化させるおそれがあります。糖尿病治療においては、食事療法や運動療法とともにストレスコントロールも大切と言えます。

コルチゾールの増加を防ぐには。上手にストレスコントロール!

健康な人においても、ストレスは体にとって負担をかけるもの。
特に糖尿病患者さんの場合は、コルチゾール値の上昇で糖尿病が悪化することがあるので注意が必要です。

日々の中で、上手にストレスコントロールをしましょう。


<ストレスコントロールの方法>

⑴ 周囲の人に話を聞いてもらいストレスを発散する
家族や友人など、相談できる人に自分の不安感や抱えている問題について話を聞いてもらい、一緒に解決法を模索したり、話を聞いてもらうことでストレスを上手に発散させましょう。


⑵ リラックスやリフレッシュできる自分の時間を作る
毎日少しの時間だけでも、リラックスやリフレッシュできる自分だけの時間を作り、ストレスを翌日まで引きずらないようにすることが大切です。


⑶ ポジティブ志向になる
ネガティブ志向だと、ストレスを溜めこみやすくなるため、あまり理想にこだわりすぎず、ありのままの自分を受け入れ、他人と比較しないようにして、自分の良い面に目を向けるようにしましょう。


⑷ 医師や心理カウンセラーなど専門家に話を聞いてもらう
他人に相談してもなかなか解決しない、うまくストレスを発散できないという場合は、心身ともに悪化する前に、専門家に相談するのも一つの方法です。相談相手は糖尿病の主治医に限らず、心療内科やカウンセラー、身近な医療スタッフなどでも構いませんので行動に移すことが大切です。


糖尿病の治療には、ストレスを溜めないことも大切

糖尿病は血糖コントロールがうまくいけば、上手に付き合っていくことができる病気ですが、一度罹患すると完治という基準がないため、一生付き合っていかなければなりません。
症状の進行具合にもよるものの、定期的に通院し、食事療法や運動療法を継続したり、治療薬を飲んだりしていると、生活の自由度が低くストレスを感じてしまうこともあるでしょう。

しかし、今回紹介したように、ストレスを溜めこんでしまうとコルチゾールにより血糖コントロールが難しくなり、糖尿病を悪化させてしまうこともあるのです。ストレスにより負のスパイラルを招かないためにも、自分なりのストレスコントロール法を見つけて糖尿病とうまく付き合っていきましょう。

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