治療と予防コラム

意外と知られていない糖尿病の合併症「動脈硬化性疾患」って何?

糖尿病が悪化すると身体のさまざまな箇所に合併症が現れます。
合併症といえば、神経障害・網膜症・腎症の三大合併症がもっとも知られていますが、その他にも動脈硬化性疾患による症状がみられるのも糖尿病の特徴です。

「動脈硬化」は聞いたことがある方も「動脈硬化性疾患」はあまり聞きなれないかもしれません。
簡単にいうと、動脈硬化が引き金になって起こる症状のことで、心筋梗塞を中心とした心血管系疾患や脳梗塞・脳卒中を中心とした脳血管障害などの事を指します。


「動脈硬化」とはどんな症状なのでしょうか。

最初に動脈硬化について説明しましょう。

私たちの体には、大きく分けて2種類の血管が全身を張り巡っています。
1つは血液を介して酸素や栄養を全身に運搬する「動脈」、もう1つが体内でできた二酸化炭素を、肺を介して二酸化炭素を体外に排出する「静脈」です。
「動脈硬化」とは文字通り動脈の壁が硬くなり、血管の働きが低下する症状を意味しています。血管内の症状は自覚症状を感じることはほとんどないので、発見が遅れやすく症状を放置することで心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる重篤な病気につながってしまうこともあります。


では、動脈硬化はどのように発症するのでしょうか。
動脈硬化が起こる部分は、血管の内側にある「内膜」と内膜の表面を覆う「内皮細胞」です。
動脈硬化の多くの場合は、まず、血中のコレステロール値が高い状態が続くことで、動脈の「内膜」にネバネバとした粥状の脂肪分が沈着します。これにより、

  • 粥状の脂肪分が内膜にこびりついて血管を狭める
  • 血管の弾力性が低下する
  • 血管内に小さなこぶやただれを起こす

などの症状を引き起こします。


動脈硬化は、血液循環量がおおく、コレステロールや血糖などの血中成分の影響の受けやすい血管に好発します。最も多くみられる部位の順番は
1. 大動脈
2. 脳動脈
3. 冠動脈
4. 心臓
5. 脾動脈
6. 腎動脈
です。


参考:
国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス 2.動脈硬化の起こりやすい部位と病気


糖尿病と動脈硬化の関係とは?

糖尿病によって高血糖状態が続くと、動脈硬化の進行を加速させることが知られています。
それには次のようなメカニズムがあります。


1 高血糖状態により、血管の内膜にブドウ糖が付着
2 内膜のたんぱく成分とブドウ糖が化学反応を起こし、「活性酸素」が作り出される
3 活性酸素の酸化作用により、内膜の表面をおおっている内皮細胞が炎症を起こす
4 内皮細胞の炎症を沈めるため、単球が内皮細胞の間に入り込む。白血球は、「マクロファージ」という免疫細胞に変化する
5 「マクロファージ」は血中のコレステロールを呼び寄せ、内皮細胞の炎症部分に粥状の脂肪物質をこびりつかせ動脈硬化を引き起こす


さらに、IDF(国際糖尿病連合)は、糖尿病による食後の急激な血糖上昇が動脈硬化による心血管系疾患の発症を高め、また進展を早めると発表しています。
そのため、急激な血糖上昇や血糖変動は体内の酸化ストレスを増大させ、動脈硬化の発症に大きく影響しているといっていいでしょう。


参考:
第一薬品工業株式会社 健康情報

糖尿病による動脈硬化性疾患とは?

最初に説明したように、動脈硬化がきっかけとなり起こる症状にはいくつかあります。


・冠動脈疾患
心筋に酸素を供給する冠動脈。この動脈に異常が生じると不整脈や心筋梗塞の原因になります。糖尿病患者さんの心筋梗塞のリスクは健康な人の2~4倍以上で、虚血性心疾患が死因の原因となる人も増加傾向にあります。
また動脈硬化は血管の90%が塞がれるまで、ほとんど自覚症状がないため、急性心筋梗塞を起こした際にはすでに心臓の血管に細かな新生血管が生じ不整脈や心不全を起こしやすい状況となっているケースが多いのです。

・脳血管障害
糖尿病では脳出血よりも脳梗塞のリスクが高く、健康な人の実に2倍の頻度で発症するといわれ、脳に小さな梗塞が多発する傾向にあります。
さらに、一過性の脳虚血発作や軽い麻痺を繰り返し徐々に脳血管性認知症を引き起こす危険性もあります。


・末梢動脈疾患
特に下肢の末梢動脈の異常が代表的で、糖尿病患者の10~15%が症状を引き起こすとされています。
軽度では冷感やしびれ、症状が進むと歩行時の下肢のしびれや痛み、さらに安静にしていても痛みを感じ続けるようになります。また、皮膚が炎症を起こしただれ、壊死を引き起こす恐れもあります。

糖尿病患者さんのための動脈硬化予防法

糖尿病は、動脈硬化を誘発する要因のひとつ。それに加え、肥満と脂質代謝異常、高血圧のいずれかを併発するメタボリックシンドロームや喫煙歴がある場合、動脈硬化のリスクはさらに高まります。
そのため、動脈硬化を予防するにはその危険因子を取り除く生活習慣を身につけることがポイントとなります。


<動脈硬化を予防するための生活習慣改善ポイント>

  • 食べ過ぎないようにし、標準体重を維持する
  • 肉の脂身・乳製品・卵黄を減らし、魚や大豆製品を多く食べる
  • 食物繊維を含む食材を積極的に取り入れる
  • 塩分の摂りすぎに注意する(1日の塩分摂取目安:男性8.0g未満、女性7.0g未満、高血圧症を合併している場合6g未満)
  • 外食を控える

  • 運動は脂肪の燃焼をアップさせる有酸素運動を取り入れる
  • 喫煙者は禁煙を検討する
  • 飲酒習慣のある人はお酒の飲み方を見直し節酒、禁酒を試みる
  • 定期的に血液検査を行ない、血糖値だけでなく自身の血清脂質値(コレステロール値、中性脂肪値)を把握する。

※動脈硬化予防のための血清脂質目標値
総コレステロール: 200 mg/dl 未満
LDL コレステロール: 120 mg/dl 未満
HDLコレステロール: 40 mg/dl 以上
中性脂肪: 150 mg/dl 未満


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動脈硬化予防のために、血糖コントロールだけでなく肥満と血圧にも注意しよう!

糖尿病の合併症である動脈硬化性疾患は心臓や脳に大きな弊害を引き起こします。
動脈硬化の発症を抑えるため、血糖コントロールと合わせ、肥満や高血圧に注意したいものです。
定期的な健診で自分の血清脂質値と血圧を把握して、生活習慣を改善し、動脈硬化を予防しましょう。


  • 参照・参考
  • [21] 動脈硬化 | 血管・血液 | 循環器病あれこれ | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
  • 健康情報|とやまの製薬会社|受託製造|第一薬品工業株式会社
  • International Diabetes Federation – Home
  • 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス(2014)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013 – 日本糖尿病学会

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