ホントに改善できるの?!漢方薬が糖尿病に与える効果とは?
糖尿病における漢方薬治療の進め方
漢方では、四診(ししん)と呼ばれる独自の診断方法があります。
四診では、望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せつしん)という4つの方法で患者から情報を得て、「証(しょう)」という患者の体力や体質を判定します。
また、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という概念もあります。「気・血・水」の、気はエネルギー、血は血液、水は体液をあらわし、生命活動に必要な3つの要素のどこに変調をきたしているのかも併せて見ます。そうすることで、患者の病態だけではなく、体質を重んじて一人一人に合った漢方薬を処方していきます。
ではここで、「証」と「気・血・水」の二つのものさしで見る体質のタイプをわかりやすく表で示します。
実証 虚証 体型 筋肉質でガッチリ 細くて華奢 皮膚 血色がよく艶がある 顔色が悪くて肌が荒れやすい(乾燥肌) 活動性 体力がある 体力がなく弱々しい 体温 暑がり 冷え性、寒がり 胃腸 強くて便秘ぎみ 弱くて下痢をしやすい
(表1;「証」の分け方「虚」と「実」)
参考;http://www.kampo-view.com/shirou/order.html
体力がなく胃腸が弱い人、華奢な人を「虚証」、体力があり、筋肉質な人、胃腸が強く暑がりの傾向がある人を「実証」と判別します。
また、どちらにも偏らない「中間証」というタイプもあります。
「気・血・水」は、3つの要素のどれがうまく機能していないかを判断します。
実証、虚証と組み合わせてみたのが表2です。
(表2;漢方医学における「気・血・水」と「証」の捉え方の一例)
参考;http://homepage2.nifty.com/KAWAGUCHIKAMPO/yomoyama62.htm
http://www.kaikido.jp/chui.html
糖尿病の漢方治療においても「証」と「気・血・水」で判断され、漢方薬が処方されます。
血糖値を下げることを目標とする西洋薬とは違い、あくまでも漢方は、糖尿病によって現れている合併症の症状や自覚症状を緩和、改善する目的で処方されることになります。
たとえば、糖尿病には合併症で「糖尿病神経障害」がありますが、糖尿病によって自律神経が障害され、消化管の運動神経の機能が低下するため便秘を引き起こす場合があります。
この場合、西洋薬では酸化マグネシウムなどの下剤が処方されます。
しかし、漢方では四診に基づき、実証タイプで気のエネルギーが不足している人には「麻子仁丸(ましにんがん)」、虚証タイプで水分不足の人には「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」や「五苓散(ごれいさん)」、実証タイプであれば全体的な体の調子を整える「防風通聖散」(ぼうふうつうしょうさん)などもあります。
体質や症状の出方によって処方が細かく変わってくるのが特徴です。
このように、同じ「糖尿病による便秘」という症状でも証によって違った処方になるのが漢方なのです。
漢方治療は効果もあるが限界もある
糖尿病を漢方薬で改善する方法とその効果について見てきましたが、現在の糖尿病治療においては、あくまで漢方薬は補助的な役割であり、糖尿病患者さんの症状緩和や合併症の予防が目的となっています。
糖尿病では血糖値を確実に下げることが必要であるため、漢方薬による効果だけでは糖尿病治療に限界があります。
西洋医学の治療を基本とし、医師との相談の下、漢方もうまく取り入れていくと良いでしょう。