治療と予防コラム

糖尿病の人が処方される高血圧の薬

糖尿病で高血圧の人は、糖・脂質の代謝に異常があったり、インスリン抵抗性(インスリンが分泌されていても、それに対する体の反応性が弱いため血糖が下がらない体質)があったりするので、通常の高血圧治療と比べ、糖尿病の病態を考慮しなければならない点があります。

一方、高血圧に関しては、日本高血圧学会によって、『高血圧治療ガイドライン』が作成されていて、糖尿病の人についても、使用すべき高血圧の薬が示されています。
糖尿病の人に対する高血圧の薬について、その働きと特徴ごとに分類し、まとめて解説していきます。

高血圧治療ガイドラインで示されている糖尿病の場合の薬

糖尿病の場合、薬を服用することによって低血糖症状がわかりにくくなったり、糖・脂質代謝に悪影響を及ぼすような薬の使用は好ましくありません。
『高血圧治療ガイドライン』に示されている糖尿病における高血圧の薬については、糖・脂質代謝や合併症に対する影響を考慮して、第一選択薬としてACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)という種類の薬が記載されています。

それで効果が不十分だったときにはカルシウム拮抗薬、利尿薬といった種類の薬の使用があげられています。

これらの種類の薬をその働き方によって分類すると、次のようになります。
①血管の収縮を抑えて血管を拡げ血圧を下げる薬。
   カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB
②循環血液量(水分の再吸収)を減らして血圧を下げる薬。
   利尿薬

糖尿病で高血圧の人の第一選択薬は、ACE阻害薬とARB

●ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
一言でいうと、体内で血圧上昇の原因となる成分ができるのを妨害することで、血管が拡がり血圧が下がるという薬です。
少し具体的に言うと、私たちの体の中には血圧上昇の原因となるアンジオテンシンⅡという生理活性ペプチドがあります。このペプチドが作られないようにするのがACE阻害薬です。

特徴としては、インスリン抵抗性(インスリンが分泌されていても、それに対する体の反応性が弱いため血糖が下がらない体質)を改善する働きがあるのに加え、糖尿病新規発症抑制作用がみられ、心臓や腎臓に対する保護作用もあり、心不全の治療薬にも使われますので、糖尿病で高血圧の方、臓器合併症のある方の使用に適した薬です。
妊婦・授乳婦には使えません。

副作用として空咳が出やすくなる場合があります。
代表的な成分として、カプトリル、アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、リシノプリル水和物、エナラプリルマレイン酸塩、ベナゼプリル塩酸塩、テモカプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、シラザプリル水和物等があります。

●ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
体の中にある血管収縮成分の受容体をブロックすることで末梢にある血管を拡げて、血圧を下げる薬です。
さらに腎臓でのナトリウム再吸収が抑制されるので、循環血液量が改善され腎機能の保護もみられます。
ACE阻害薬に比べ、空咳の副作用が少なく、糖尿病新規発症抑制作用もみられていますので、糖尿病で高血圧の方、心臓や腎臓等の臓器合併症を持った人への使用に適しています。妊婦には使えません。
副作用は少ないほうですが、出やすいものとしては、血管が拡張したことによるふらつき等があります。
代表的な成分として、ロサルタンカリウム、カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル、イルベサルタン等があります。

糖尿病で高血圧の人に第一選択薬以外でよく使われる薬

●カルシウム拮抗薬
血管の周りにある筋肉細胞内にカルシウムイオンが流れ込むと、血管は縮み血圧が上がってきます。この流れ込むルートをふさぐのがカルシウム拮抗薬で、カルシウムイオンが筋肉細胞に入るのが抑えられると、縮んでいた血管は拡がり、血圧が下がってきます。

特徴としては、血圧を下げる効果が強く、糖・脂質代謝に影響しません。妊婦に対する安全性は確立されていません。

代表的な成分として、ニフェジピン、ニカルジピン塩酸塩、マニジピン塩酸塩、ニルバジピン、ジルチアゼム塩酸塩、ベニジピン塩酸塩、ニトレンジピン、ニソルジピン、アムロジピンベシル酸塩、シルニジピン等があります。


●利尿薬
尿を出して血圧を下げる薬です。利尿作用があるので、むくみ等にも効果があります。
なぜ尿を出すことで血圧が下がるのかというと、この利尿薬は、腎臓でナトリウムイオンが再吸収されるのを抑える作用があります。ナトリウムイオンは体に再吸収される時に一緒に水分も引き込んでしまいます。

利尿薬を用いることで、先に尿として水分を出してしまうので、水分が血管に引き込まれなくなり循環血液量が減り、血圧が下がります。

インスリンの分泌が低下がみられることから、血糖が下がりにくくなりますが、糖尿病での血圧を下げる効果が期待できることから、少量使用されたりすることもあります。服用後1~2時間で尿意があるので、夜間の排尿のことを考えた服用がポイントです。

代表的な成分として、トリクロルメチアジド、インダパミド、トリパミド、メチクラン、メフルシド等があります。

まとめ : 糖尿病での高血圧の薬は、糖・脂質代謝や合併症に配慮

高血圧の薬はいろいろとありますが、糖尿病も高血圧も、動脈硬化の危険因子の1つで、両者が合併することで、虚血性心疾患や脳血管障害の発生頻度が大きく増加します。

したがって、高血圧をもった糖尿病の人は、『高血圧治療ガイドライン』にあるように、糖・脂質代謝や合併症に悪い影響を及ぼさない薬について理解し、血糖・血圧の両方の管理をしていかなくてはなりません。

糖尿病は、合併症に糖尿病性腎症などがあり、血圧コントロールについても糖尿病の人の血圧調整目標は、130/80mmHg未満と低めに設定されていることから、より高血圧に対するコントロールをしっかりやっていく必要があります。

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