治療と予防コラム

糖尿病の治療と予防に有効な運動療法

生活改善が必須である糖尿病ですが、治療と予防という観点において、毎日の『食事療法』と『運動療法』は必須項目です。

特に運動療法を行うことによって、食事療法と併せた血糖値のコントロールに加え、脂質の代謝の向上が見込めます。
脂質の代謝向上により、食事などで過剰となっている体内の脂質を低下させ、肥満の予防・改善に多大な効果を発揮します。

ここでは、自宅など日常で手軽に行える様々な運動や、その効果などをご紹介したいと思います。


1.なぜ運動することが欠かせないのか?

糖尿病患者や糖尿病になりやすい人の多くは、食生活の乱れ(偏食や暴飲暴食、飲み過ぎなど)や運動不足、日々のストレスといった点が目立ちます。また、太っている(肥満)という点も同様に糖尿病になる大きな要素です。

このような生活を続けた結果、正常値以上の血糖値を示すようになり、そのコントロールも滞ってしまうのです。

運動をするということは、エネルギーを消費するということです。そのエネルギーを消費させるためには血糖が必要です。つまり、運動により体内の余分な血糖がエネルギーになるため、血糖値が下がるということなのです。
糖尿病における運動療法の重要さはここにあります。

2.どのような運動をすればよいのか?

運動療法において理想的で目標と言われるのが以下のような内容です。

・できれば毎日行う。(少なくとも週に3回から5回)
・1回の運動量は20分から60分
・運動の程度は、全身を動かすような有酸素運動

※有酸素運動について
有酸素運動と聞くと、とても激しい運動では?と誤解されがちですが実はそうではなく、ゆっくりとしたリズムで呼吸が苦しくなく、十分に酸素が吸える程度の全身を動かせる運動のことです。


ブドウ糖(血糖)や体の脂肪をエネルギーに変えるためには十分な酸素が必要です。
激しい運動を短時間で行うよりも、一定のリズムで呼吸をし、なるべく長く続けられるような運動が理想と言えます。
運動をするタイミングとしては、食事後約1時間後が最も効果的と言われています。
これは、食事による血糖値の上昇が食後1時間から2時間でピークとなるためで、このタイミングで運動をすることで、血糖値が上がりすぎるのを抑える効果が出てきます。

3.予防のための運動の工夫について

運動と言っても、わざわざ何かスポーツを始めるとなると、そのための時間や用具の確保など、何かしらの負担を強いられます。
スポーツを始めることは確かに効果的ではありますが、必ずしもスポーツをすることが目的ではなく、日々体を動かすことが大切です。

・外出するとき、少しだけ早めに歩く
・遠回りして歩く距離を増やす
・買い物は歩いて、買いだめをせずこまめに行く
・3階までなら階段を使う
・1日1万歩を目標に歩く
・週に1度くらいは、隣の駅まで歩いてみる
・周囲の風景などを楽しみ、観察しながら歩く
・テレビを見ながら、ストレッチをする
・泳げなくても、水中を歩く
こんなちょっとしたことなら日常にとりいれやすいのではないでしょうか。

例えば、通勤が車のサラリーマンや、移動の殆どを車で行っている方においては、可能な限り歩いたり自転車に変えてみるのもよいでしょう。
バスや電車などの交通機関を利用すれば、駅までは歩くことになりますし、階段の昇り降りもあってウォーキング効果が見込めます。

ご高齢の方におきましても、散歩する感覚で歩く時間を少し増やしたり、ゆっくりであっても腕を上げ下げしながら行うだけでも全身の運動になります。

あまり出歩けない時でも、家の中で椅子に座ったままできるストレッチのような手軽な運動もあります。

・両腕を伸ばしてぐるぐると大きく回す。(反対方向にも交互に回す。)
・両手を胸のあたりで合わせて、押し合うようにぐっと力を入れる。
・両足を床と水平になるように上げてそのまま保ち、勢いをつけずにバタ足のように上下に動かす。
・椅子を手で押さえながら、背中で椅子の背もたれを押すように力を加える。
これらを組み合わせて20分前後行うだけでも運動になります。

4.糖尿病における治療のための運動療法

糖尿病の運動療法を行う場合は、医師の診断(メディカルチェック)を受け、運動の可否を判断してもらいましょう。
また、個々の基礎体力や年齢、体重、健康状態などを踏まえた運動量を設定することも併せて医師の指示のもと行いましょう。

一般的に推奨されている運動療法の内容については以下の通りです。


<運動種目>
運動をすることで、筋肉が体内の糖や脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪の分解を促進させるため、できるだけ全身の筋肉を使用するウォーキング(速歩)、ジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動を行いましょう。


<運動時間>
運動開始後、エネルギー源として、10分後以降では血中の糖、15分後以降では遊離脂肪酸も利用されるため、1回の運動継続時間は20分以上必要です。


<運動強度>
エネルギーとして糖と遊離脂肪酸の両方が利用される中等度「ややきつい」と感じる程度の運動強度(心拍数が100~120拍/分)あるいはそれ以下の強度がよいでしょう。


<運動頻度>
糖の代謝能力を高め、運動後、約12-72時間持続させることにより、血糖値を低下させるため、運動はできれば毎日、少なくとも1週間のうち3日以上行いましょう。


運動を行うタイミングにつきましては、時間があれば、いつでも行うことが可能ですが、特に食後1時間後辺りで行うと食後の高血糖状態が抑制されると考えられています。


5.運動による消費エネルギーについて

運動療法により消費されたエネルギーは以下のように計算することが可能です。

1分間のエネルギー消費量 (kcal):運動種類別(※)×体重 (kg) ×運動時間(分)
=運動により消費したエネルギー量(kcal)


※運動種目別のエネルギー消費量(1分間、体重1kgあたり・単位:kcal)
・散歩(60/分):0.0464
・歩行(80/分):0.0534
・ジョギング(軽い):0.1384
・サイクリング(時速10km程度):0.0800
・階段の昇降:0.1004
・水泳(平泳ぎ):0.1968
例えば、体重60kgの人がジョギングを20分行った場合の消費エネルギーは166.08kcalとなります。


運動のやり過ぎや、合併症などの症状を知らずに運動を行うと、糖尿病を悪化させる恐れがあります。

メディカルチェックは定期的に欠かさず行い、
運動療法の効果の判断やアドバイスを受けるようにしましょう。


  • 参照・参考
  • 脂質異常症の運動療法とモチベーションの維持 | メディカルノート
  • 糖尿病を改善するための運動 | e-ヘルスネット 情報提供
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