【医師監修】糖尿病患者さんが気をつけたい感染症!「肺炎」は要注意
糖尿病患者さんは肺炎にかかりやすい
血糖値が高くなると、白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下するため、糖尿病患者さんは感染症にかかりやすく、また悪化させやすいと言われています。
老廃物の排出に関わり、菌の出入りが起こる尿の通り道や呼吸器では、免疫機能が低下して体の抵抗力が落ちると、感染症が発生しやすくなります。肺炎も糖尿病患者さんがかかりやすい呼吸器感染症のひとつです。
肺炎の感染には、何らかの病気で入院中に感染する「院内感染」と、日常生活の中で感染が起こる「市中感染」があります。病気で入院中に抵抗力が落ちている最中に起こる院内感染は悪化させやすく、危険が高いといわれています。
糖尿病患者さんも、免疫機能が低下しているため、悪化させやすい危険な状態にあります。肺炎にかかってしまった場合には、早期に医師を受診し、治療を行うことが大切です。
肺炎の症状はわかりにくい?高齢者は特に注意
肺炎の初期段階には、せき・たんや発熱など、風邪に似た症状が現れますが、風邪に比べると程度が重いことが特徴です。熱が下がらず、38℃以上の高熱が何日も続いたり、ただせきが出るだけでなく、胸の痛みや息苦しさがある場合には、肺炎の可能性があります。
特に気をつけたいのは、高齢者の場合、せきや発熱などのはっきりした症状が自覚されない場合があることです。ただ食欲がない、元気がないと思っていたところ、重症化して歩行困難になったり、意識障害に陥ったりして来院することもあります。いつもと様子が違う時にはすぐに気づけるようにしておきましょう。
肺炎を治療・予防するにはワクチンも有効
肺炎の原因となることが多い菌やウイルスとしては、肺炎球菌やインフルエンザウイルスがあげられます。いずれも飛沫感染するため、外出先から帰った時にはすぐにうがい・手洗いをして、菌やウイルスを持ち込まないようにしましょう。
最近では、一般的な感染対策だけでなく、ワクチン接種による予防もすすめられています。2014年より、65歳以上の方については肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、公費負担で接種できるようになりました。
また、肺炎の原因となりやすいインフルエンザの予防には、インフルエンザワクチンも有効です。インフルエンザウイルスそのものが肺炎の原因となることもあれば、インフルエンザにかかって弱った体が引き続いて肺炎に感染することもあります。
抗インフルエンザ薬がなかった時代には、糖尿病患者さんがインフルエンザにかかったり、それに関連する肺炎にかかって入院するリスクは今と比べておよそ6倍、死亡リスクは2倍にのぼっていたといわれています。
糖尿病患者さんで、ワクチン接種をしてはいけない理由が特にない人は、あらかじめインフルエンザワクチンを受け、対策をしておくことが推奨されています。
こうした予防策に加え、肺炎にかかりやすい状態そのものを改善するため、日ごろから血糖コントロールに気をつけておくことが何より大切です。インスリン療法のほか、運動療法・食事療法にも気をつけて、血糖値を良好に保つことが、免疫を落とさないことにつながります。